テレビで、中国のお年寄りたちが公園に集まって、ゆっくりと太極拳を楽しんでいる映像が映し出されることがあります。
ゆっくりとした動きなので、のんびりとした印象がありますが、太極拳は実際自分でやってみると、ものすごく大変で、初心者ではゆっくりした動きをキープすることができません。
太極拳のようにゆっくりとした動作で行なうトレーニング方法を、スロートレーニングといいます。
ゆっくりと動くことによって、筋肉の肥大や、筋力の増強効果を期待することができます。
スロートレーニングは関節や筋肉に負荷がかからないので、安全に行なうことができるトレーニング方法と言えます。
今回は、このスロートレーニングに注目をしてみました。
もくじ
1スロートレーニング(スロトレ)とは
2スロートレーニングの効果
3スロートレーニングの方法
4スロートレーニングに挑戦
スロートレーニング(スロトレ)とは
スロートレーニング(スロトレ)は、文字通りゆっくり行なう筋トレです。
スロートレーニングでは、3~5秒かけて上げて、3~5秒かけて下げるという動作を繰り返します。
腕のちからコブや腹筋などのように、筋肉は力を込めると固くなります。
スロートレーニングは動きがゆっくりのため、運動中筋肉にずっと力を入れた状態になり、筋肉は常に固くなります。
筋肉が固くなることによって血管が押しつぶされて、血液の流れが悪くなります。
血液の流れが悪い状態で動作を続けると、筋肉に酸素が十分行き届かなくなります。
低酸素状態で筋トレを行なうと、筋肉がより強くなっていきます。
専用のベルトを使って、低酸素の状態を作り出すトレーニングする方法を加圧トレーニングと呼び、スロートレーニング(スロトレ)と同じようなトレーニング方法です。
加圧トレーニングは、短期間で筋肉をつけることができるトレーニング方法ですが、腕や脚のつけ根を専用のベルトでしばってトレーニングを行なうため、血流が悪くなる危険があり、専用のトレーナーと共にトレーニングを行なう必要があります。
スロートレーニングは、専用ベルトを使うことなく、安全に加圧トレーニングと同じ効果を得ることができます。
また、スロートレーニングはダンベルなどの重たい道具を使うこともなく、激しい動きもない状態で筋トレの効果を高める方法なので、女性や高齢者も行なうことができます。
これで、太極拳が高齢者に人気がある理由が、よくわかりますね。
スロートレーニングの効果
スロートレーニングの基本的な動きの特徴は、1回の動きで肘や膝を伸ばしきらないところにあります。
つまり、腕立て伏せを行なうとき、肘を曲げてから伸ばす時、腕を伸ばしきらないままで2回目の腕立て伏せに入ります。
腕が伸びきると、そこで筋肉の休憩が入ってしまいます。
筋肉を休ませない状態を続けることによって、軽い運動であってもハードな運動であるように筋肉に錯覚をさせて、効果的に筋肉を鍛えていくことができます。
基礎代謝が上がる
スロートレーニングによって効果的に筋肉をつけると、基礎代謝が上がり、痩せやすく太りにくい体質になります。
筋肉量が上がることによって、血液やリンパの流れも良くなり、老廃物もたまりにくくなって、体温が上がります。
その結果、冷えやむくみがなくなります。
血液の流れが良くなると、内臓の働きも活発になります。
内臓も消費エネルギーが高いので、スロートレーニングによるダイエットへの影響は、とても大きいと言えるでしょう。
成長ホルモンの分泌が盛んになる
ちょっとした運動を行なった時、腕や太ももなどがじーんと重くなることはありませんか。
これは、運動を行なうことによって乳酸が溜まるために起こる症状です。
血液の流れが制限された状態でのトレーニングでは、たくさんの乳酸が筋肉の中にたまります。
以前は、乳酸は疲労物質と言われ、完全に悪者扱いをされていたのですが、今では、乳酸は脳や身体の重要なエネルギーに変わることがわかってきました。
たとえば、有酸素運動を行なうと、体に取り込んだ酸素と乳酸が合成され、新しエネルギーを生み出します。
この時、脂肪が燃焼することによって酸素と乳酸の合成を助けます。
したがって、ダイエットのための脂肪燃焼には、乳酸の力が必要となるわけです。
この乳酸は、成長ホルモンの分泌を促してくれます。成長ホルモンの分泌が盛んになると、筋肉や骨の成長に、なおいっそうの期待ができます。
スロートレーニングの方法
スロートレーニングはゆっくりした動きで、ノンロック状態をキープできれば効果があらわれます。
ノンロックとは、肘や膝を伸ばしきることで筋肉を休ませずに、少し曲げた状態で、すぐに次の動作に移る方法です。
ノンロックとは、関節をロックさせないという意味になります。
腕立て伏せなどで、腕を曲げて伸ばした時に関節を伸ばしきると、筋肉がひと息ついてしまいます。
スロートレーニングでは、トレーニングの初めから最後まで、筋肉を緊張させたままゆっくりと運動を続けていきます。
途中で休憩を入れる場合でも、1分以内にしておきましょう。
有酸素運動も行なう
スロートレーニングは筋肉トレーニングです。
筋トレは無酸素運動になります。無酸素運動は、筋肉の量を増やすトレーニング方法ですが、脂肪を燃焼することができません。
スロートレーニングを行なったあとは、10分~15分の有酸素運動を行なうと、より効果的に体を引き締めることができます。
有酸素運動と言っても、自宅でのスロートレーニングのあと、わざわざ外に走りに行かなくても、その場で足踏みをするだけでも十分効果があります。
また、ウォーキングやランニングなどの有酸素運動を行なう前には、必ずスロートレーニングを取り入れると良いでしょう。
スロートレーニングに挑戦
それでは、スロートレーニングによる筋トレを始めてみましょう。
スロトレスクワット
スクワットでは大殿筋、大腿四頭筋、ハムストリングスを鍛えることができますが、腰を下ろすとき腹筋も使うので、全身トレーニングと言われています。
足を肩幅より少し広めに開いて、息を吸いながら膝を曲げてしゃがみます。
上半身を少し前に傾けると体が安定します。
しゃがむ時には、お尻を突き出して、膝がつま先よりも前に出ないように気をつけます。
腰を落としきったら、今度は息を吐きながら膝を伸ばしていきます。
ここからが注意するポイントですが、膝は完全に伸ばしきらないようにしましょう。
8割くらい伸ばしたら、また息を吸いながら腰を下ろしていきましょう。
スロトレニートゥチェスト
ニートゥチェストは、膝を胸に引き寄せるトレーニングです。
おもに腹直筋と大腰筋を鍛えることができます。
まずは、床に脚を投げ出して座ります。
手はお尻の後ろに置いて、上体を少し後ろに倒して腕に寄りかかります。
このままで両足を少し浮かせます。
ゆっくりと3秒かけて、息を吐きながら、片方の膝を胸の方に引き寄せます。
引き寄せたら、3秒かけて息を吸いながら元に戻ります。
このとき、膝をまっすぐ伸ばしきらないように気をつけましょう。10回を1セットとして、初めは1セットからスタートしましょう。
お尻の下にバランスディスクを置くと、さらに効果的にトレーニングができます。
10回が難しいような時は、片足を床につけたままで行いましょう。
スロトレヒップリフト
ヒップリフトは、おしりの筋肉を集中的に鍛えることができます。
床に仰向けに横になり、両膝を立てます。
3秒かけて息を吐きながら腰を持ち上げます。
この時、胸から膝頭までが一直線になるようにして、腰が上がりすぎたり低すぎたりしないように気をつけましょう。
次は、息を吸いながら3秒かけて元の位置に戻しますが、お尻を床につけることなく、再び腰を上げていきましょう。
10回
スロトレバックエクステンション
バックエクステンションは、背中全体の筋肉やお尻の筋肉を鍛えることができて、猫背の矯正に効果的です。
床にうつ伏せに寝て、手は耳の後ろに添えます。
そのまま3秒かけて、ゆっくり上半身と脚を同時に浮かせて体を反らせます。
背中の筋肉が縮んでいることが確認できたら、3秒かけて戻します。胸や脚が床につく直前で、再び体を反らします。
バックエクステンションで初心者が注意しなければならない点は、反り返る時に、ビヨーンと反動をつけてしまうと、思った以上に反り返りすぎて腰を痛めてしまいます。
あくまでもゆっくり行うことがスロートレーニングです。
また、反り返るときにあごを上げてしまうと、体はほとんど反っていなくても、自分では反っているような錯覚をしてしまいます。頭の角度は、常に一定に保ちましょう。
スロトレランジ
ランジでは、太ももと大腰筋を鍛えることができます。
立ち上がって片足を前に出します。上体をまっすぐに保った状態で、息を吸いながら3秒かけてゆっくり腰を落としていきます。
膝が足先から出ると膝関節を痛めてしまうので、気をつけましょう。
後ろの脚の膝が床すれすれまで下がるくらいに、ゆっくり腰を落としましょう。
今度は息を吐きながら、やはり3秒かけて腰を上げていきましょう。
腰が上がりきる前に、再び腰を落としていきましょう。
スロートレーニングは体に負担がかからないので、誰にでも気軽に取組めるトレーニング方法ではないでしょうか。
しかし、ゆっくりした動きで、さらに筋肉の休みがないとなると、トレーニングはかなりきついものであることもわかると思います。
きついと感じたら、トレーニングが上手にできていることになります。
反対に、すいすいとできてしまった方は、もう1度トレーニング方法をおさらいしてみましょう。
スロートレーニングは体幹を鍛えることができるので、2か月ぐらい続けると思った以上に筋力がつき、基礎体力も上がります。
ハードなトレーニングではないので、ダイエットのためにぜひ取り入れてみましょう。
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